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【連載】ベストカー本誌編集委員・梅木智晴の「ちょっとした話」 Vol.36[フル機械式のニコンF2をなぜ手放してしまったのか!?]

 私、ウメキ。写真撮影が昔から趣味で、「写真を撮る」こと自体も楽しく大好きなのだが、機材に対する思い入れというか、カメラやレンズを買いそろえたくなるという衝動にも駆られるから、始末がよろしくない。

 それ自体が趣味の対象になってくると「カメラ沼」だとか「レンズ沼」などと言われる、それは深くて、もがけばもがくほどにズブズブ埋まっていくから、恐ろしいもの……。

■一度手にした機材は手放せなくなり、カメラやレンズはどんどん増えていく

 基本的に衝動買いということはしない。徹底的に考え、悩み、「オマエ、それ、本当に必要か?」などと自問自答しつつ、でも、結局は「手に入れる理由」を考えるということの繰り返し。

 なまじ即断即決、一瞬の思い付きで買ったものではないだけに、一度手に入れたカメラなりレンズなりには相応の思い入れがあるわけで、簡単には手放さない。

 手放さないと並行するように、どんどんカメラやレンズは増えていく。フィルム時代のカメラなどここしばらくは使ってもいないのだが、手放すことはできないのだ。

■自分で買ったカメラで唯一手放してしまったカメラ。それがニコンF2

 もう40年以上も昔の話だが、ニコンF2というカメラを手放したことがある。自身で買ったカメラで唯一手放してしまったカメラだ。
 1980年春、高校入学のお祝いに祖母がニコンF3を買ってくれた。高校受験頑張った、ということでプレゼントしてくれたのです。ちなみに、写真上は2000年代に入って買い増したニコンF3の化粧箱。

 その高校入学前の中学生時代。先輩が使っていたブラックボディのニコンF2が格好よく、憧れていた。

 F3はそのF2の後継機。19803月に新発売となったことで、F2は販売を終了。そう、憧れだったニコンF2は販売が終わり、後継のニコンF3が華々しくデビューしたのが、祖母が私にF3をプレゼントしてくれたタイミング。

 発売直後のF3は素晴らしいカメラで、しかも新型だから手にした私も鼻高々。「おっ、新型だね~‼」なんて声をかけられれば悪い気はしない。

■F2とF3の2台体制で鉄道写真を楽しんだ。が、そこに「バイク熱」が忍び寄り……!

 でも、しばらくするとF2への思いがふつふつと湧き上がってくる。電子制御化された最新のF3とは異なり、フル機械式のF2は無骨なメカっぽさが魅力的だった。

 その強い思いのままに、私は中古カメラ店を巡って新品同様のニコンF2ブラックボディを発見! 夏休みにアルバイトに精を出し、入手。無骨でタフなF2と洗練された使いやすいF3。この2台体制で趣味の鉄道写真を楽しんだ!!

 満足していたF2だったが、約1年後に手放してしまった……。高校2年、バイクに目覚めた私は、バイク購入資金に充当するためF2を売ってしまったのだ。

 その時はかなり悩みつつもバイク熱に負けた。買った時とほぼ同額で、F2はカメラ店に引き取られていったのですよ。

 上写真は、2000年代に入ってから購入した機械式カメラたち。でも、当時のフラッグシップ機「F2」の存在感には、やはりかなわない感じ……。

■今のカメラでは味わえない雰囲気。F2が今も手元にあれば、老後の楽しみが変わるはず!?

 あれから40年余り。今になると、やっぱりあのF2は手元に残しておくべきだったと思うことがある。

 持っていたところでフィルムカメラで写真を撮ることはないのだろうが、金属の質感、重量感、機械式カメラ特有の操作感など、今のカメラでは味わえない雰囲気。

 所有して使い続けた自分のなかの歴史があればこそ、老後の楽しみになっていたはず。それが、ニコンF2ブラックボディなのである。(ベストカー本誌編集委員・梅木智晴)