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【連載】ベストカー本誌編集委員・梅木の「ちょっとした話」 Vol.28[ランエボⅣとインプSTIバージョンⅢの対決の時、やらかした失態]

 毎週水曜日のお楽しみ(になってほしい!)ということで、お届けしているこのシリーズ。先週の「ランエボvsインプSTIの進化は、クルマ好きを熱くさせたのだぁ!」という話の続きといきましょう。

 年を追うごと、両車がバージョンアップするたびに、「ヤタベ」(茨城県谷田部町にあった日本自動車研究所)の高速周回路で動力性能テストを繰り返した「ベストカー」本誌編集部。

 本誌編集委員・梅木智晴の記憶の奥底に今でも残る「ランエボⅣとインプSTIバージョンⅢの対決」(上写真)の思い出話、さぁ、始まります!(ベストカーMate編集部B

■それは1996年の秋。ヤタベテストでインプのタイムが……!!

 たしかランエボⅣとインプSTIバージョンⅢを直接対決させるヤタベテストだったので、1996年の秋だったと思う。

 ランエボは第二世代ボディとなった「エボⅣ」、インプは「バージョンⅢ」でともにノウハウを詰め込んだ円熟の進化モデルと言うことで、対決の決着にヤタベの現場にいた編集部スタッフは虎視眈々とテスト状況を見守りつつ取材した。

 ……ところがインプSTIのタイムがイマイチ伸びない。理由はこの後のテスト中盤で判明するのだが、その時私は高速周回路のスタート地点でスターター兼タイム記録係をやっていたため、細かい状況がわからない。

 ただ、インプのタイムがランエボに対しコンマ8秒ほど遅いという「事実」のみが判然するばかり。

■「えー、インプ、タイム伸びません。……大丈夫っすかねぇ~」(ウメキ)

 ここで私はトランシーバーを使い、待機小屋で記録をつけていた先輩スタッフに「えー、インプ、タイム伸びません。ランエボの圧勝です。スバル、この動力性能差だとちょっとヤバいっすね……大丈夫っすかねぇ~」と連絡をしたのだった。

 もちろん他意はなく、明らかに動力性能差をつけられたインプSTIは、競技シーンでランエボの後塵を拝することになってしまうのでは? という純粋なテクニカル面での感想だったのだ。が、「ヤバい」とか「大丈夫か?」という言葉は不適切極まりない表現であった。

 実はこの日、インプレッサSTIはナンバーの付いた広報車の準備が間に合わず、群馬のテストコースから直送されてきた車両で、スバルのエンジニアが同行していたのであった。

 エンジニア氏たちは高速周回路の待機小屋にいて、私のトランシーバー通信はスピーカーから大音量で小屋内に響き渡ったという。

■「えー、タイムデータだけ伝えてください。お前の感想は一切不要です」(先輩スタッフ)

 先輩スタッフからの返信はいつになくそっけなく、「えー、タイムデータだけを伝えてください。お前の感想は一切不要です」。おそらく先輩の顔は引きつっていたことだろう。

 ちなみにインプSTIのタイムが伸びなかった理由は、競技用クロスミッションを組んだ車両だったため。ゼロヨン加速ではシフトアップ回数が多くなるクロスミッションは不利になるのは当然のこと。

 このことは最初に説明されていたのだが、テスト準備でコース上をあちこち動いていた私はそれを聞いていなかったのだ。

 もちろんスバル・エンジニアのみなさんには先の軽口を詫び、丁寧な説明を受けてタイムの件も深く理解した私、ウメキでありました……。

 それにしても実に失礼極まりないことだったので、28年経った今でもはっきりと覚えているのでありました……。(ベストカー本誌編集委員・梅木智晴)