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【連載】ベストカー本誌編集委員・梅木の「ちょっとした話」Vol.37 [小田急線の車両が西武線を走るってどーいうこと?]

 おなじみの連載企画、ベストカー本誌編集委員・梅木智晴の「ちょっとした話」。乗り物なんでも大好き! 「乗り鉄&撮り鉄」人間でもある梅木。今回はその「鉄分」が全開モードです! 長めの大作ですが、ぜひ読んでくださいませ(ベストカーMate編集部B

■「クリーム色の車体にブルーの帯をまいた小田急線」が西武鉄道で走る!!?

 小田急線の8000系という通勤電車車両がある。首都圏在住の40歳代以上の方なら、クリーム色の車体にブルーの帯をまいた車体色は、「昔ながらの小田急線のイメージ」「いかにも小田急線らしい」車両と感じることだろう(上写真)。

 この8000系が、同じ首都圏を走る西武鉄道で走るというのだ。小田急と西武が相互乗り入れをする……?? そんな話は聞いたことがない。その真相とは!?

■直接乗り入れではなくとも、他社線を走るケースはあるけれど……

 昨今の鉄道路線のネットワークは実に複雑。私鉄A社線とB社線が相互乗り入れをするというのは当たり前のようによくある話。さらにB社線がC社線と相互乗り入れして、「3社の車両」がそれぞれの路線を縦横無尽に走るなというのもよくある話。

 小田急線を例にすれば……。東京メトロ千代田線を介してJR常磐線と繋がっている。神奈川県域を主な営業エリアとする小田急線の車両は、地下鉄千代田線を走り、さらに常磐線を下って江戸川を越えて千葉県、さらには利根川を渡った茨城県の取手駅間まで足を延ばす……という具合。

 ちなみに上写真は、東急東横線自由が丘駅で出会った相鉄線の車両()と西武線の車両()。現在の乗り入れネットワークだからこそ撮れた写真だ。

 こうした複雑な乗り入れネットワークを介しても、今のところ西武鉄道と小田急電鉄が「営業線」として繋がってはいない。

■長い場合は40年間も走る。そんな中古車両の売買自体は珍しくはない

 鉄道車両は耐用年数がもの凄く長期に設定されている。そもそも高額な鉄道車両を、そうそう新車に入れ替えられないため、最低でも20年。長い場合は40年前の車両でも当たり前に走っている。

 鉄道車両には厳格な整備周期や検査周期が定められており、各鉄道会社が事故が起きないよう整備を徹底。車両が長く使われる要因である。

 また、一定期間ごと、壊れていなくとも部品を交換することが設計時点で想定されており、これを守ることで長期間安心して走れる車両となっているのだ。

 それでも車内設備が古く陳腐化するケースもあり、また新技術の導入で、より省エネで走れる車両も開発されることもある。首都圏などの混雑路線を持ち、資金力がある大手私鉄だと10年ごとくらいに新型車を導入するケースが多い。小田急電鉄も西武鉄道もいわゆる「大手私鉄」に分類される。

■首都圏の大手私鉄同士の売買は超レアケース。「小田急カラー」のまま「西武」で走ることはないだろうが…!

 前項までの話の流れでおわかりいただけたと思うが、小田急8000系は「中古車として」西武鉄道に売却されたのだ。

 西武鉄道は大手私鉄。これまで中古車両を売却する側ではあったが、購入する側になるというのは初めてではなかろうか(?)。
 519日から20日にかけて、最初の売却車両が小田急線内からJR線を経由して西武鉄道線に輸送された。国分寺線で小田急8000系を使用することになる。

 はたして車体塗装はどうなるのだろうか? さすがに「小田急カラー」のままということはないだろうね。
 その西武国分寺線。現在は伝統的な西武鉄道の車両2000系が走っている。それが上の写真だ。

 大手私鉄同士の車両売買は超レアケースだが、今後こうしたことも増えていくかもしれない。(ベストカー本誌編集委員・梅木智晴)