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【連載】ベストカー本誌編集委員・梅木の「ちょっとした話」 Vol.23[操安性の善し悪しって、みなさん本能的に感じ取っているんです]

 毎週水曜日のお楽しみ、ベストカー本誌編集員・梅木智晴の「ちょっとした話」シリーズ。今週もいってみよう! 今回はいつにも増して「ふむ。なるほど!」という話のようですよ……!(ベストカーMate編集部B

■自動車専門媒体の真骨頂は「新型車の試乗インプレ」。実はクルマのインプレはみなさんも自然とできている!

 ベストカー本誌のような自動車専門媒体の真骨頂といえば、なんといっても「ニューモデル試乗インプレッション(インプレ)」でしょ!! なんて思っている私、ウメキですが、最近の読者はインプレ記事にあんまり興味を示してくれないなぁ……、なんて感じていたりもするのです。

 経験豊富な自動車評論家諸氏ならではの視点でズバッと評価が下される試乗インプレは自動車専門媒体の「華」と思っているのですが、いやいや、クルマ走らせてその善し悪しを感じ取るなんていうのは、クルマに特段の興味を持たない初心者同然のドライバーでも充分できているんです。それを実感する出来事があったのでした。

今どきの若者は、むしろいろんなクルマを乗り比べて、善し悪しを体感しているのだった

 私の26歳の息子はまったくクルマには興味がない「今どきの若者」。クルマは便利だから欲しいけれど、今は維持費の負担などの問題もあって所有するつもりはないのだという。そのいっぽうで、ウインタースポーツを楽しむ彼は、移動の利便性から必要に応じてレンタカーやカーシェアリングを活用している。

 ここがポイントで、レンタカーなどを使うことで、自然といろんなクルマに触れることになっているのです。

 車種は豊富で、コンパクトカーだったらヤリス、ノート、アクア、フィット、スイフト、パッソなど。数人で出かける時にSUVクラスを借りるとライズ、ヤリスクロス、ハリアー、エクストレイルなどを借りて乗っている。

■「ライズはハンドル切った時の動きが雑で、なんかしっくりこないんだよ」と息子

 すると、「同じ値段で借りるんだったら、ライズよりもヤリスクロスが圧倒的にいいんだよね~」などと言いだすのだ。

 どうして? と聞くと、「ライズはハンドル切った時の動きが雑で、なんかしっくりこないんだよね。ヤリスクロスは同じように運転していても楽に走らせられる。ライズしか乗らなかった時はそれほど気にならなかったけれど、ヤリスクロスに乗ったら違いが分かった」という答え。フムフムフム……。

 ほかには? と聞いてみると「カーシェアで乗った新旧のノートは違うよね。旧型ノートは乗り心地がよくないし、高速道路走るとフラフラしてちょっと怖く感じることがあるんだよね。

それに対して、新型ノートはもの凄くいい。高速道路でも安定しているし、乗り心地もよくて室内も高級感があっていい」などと言う。ヤリスやスイフトだと「運転自体が楽しく感じる」とまで言うのである。

■エントリーカーほどしっかりとしたクルマにしないと、ユーザーが離れていく!!

 そんな私の息子も「いつかはクルマを買うことになると思う」と言っている。その時、こうしたカーシェアやレンタカーで得た経験がクルマ選びの基準になることだろう。

 コンパクトカーを含めたいわゆるエントリーカーと言われるカテゴリーのクルマは、コストの兼ね合いもあって、どうしても操安性面でも妥協を感じるモデルがあるのも事実。

 しかし、ここで取り上げた例を見るまでもなく、「今どきの若者」はいろいろなクルマに乗ることで、結果的に比較の機会が増えているはず。

 だからこそ「運転のしやすさ」や「高速道路での安心感」という視点で、誰もが当たり前のようにクルマの善し悪しを感じ取っているのです。自動車専門媒体のインプレ記事を読むまでもなく、自身の経験で体感しているのだ。

 エントリーカーだからこの程度でいいだろう、と言ったクルマは彼らの厳しい目で選別されて、マイカー候補から外れていく。エントリーカーだからこそ、しっかりと操安性を磨きあげたクルマが求められている、と言うことを実感する私なのでありました。(ベストカー本誌編集委員・梅木智晴)